婚約者と親友に裏切られたので、大声で叫んでみました
 そんなことがあったその日の夜、わたしは王宮へと呼び出しを受けた。
 けれど、わたしを呼び出したのは陛下ではない。シリウス殿下だ。


「――――わたしと二人きりになって、よろしいのですか?」


 王宮のサロンに通されたわたしは、殿下にそう尋ねる。侍女はお茶を淹れてくれたあと、一人残らず下がってしまった。
 正直言って、『わたしの方がよろしくない』のだけど、婚約破棄を進めるためには、避けては通れない道なのかもしれない。ゴクリと唾を呑みつつ、わたしは殿下を見つめた。


「悪いことなど何もないだろう? 君は僕の婚約者なのだし」

「……は?」


 優雅に紅茶を啜りながら、殿下はそんなことを言った。わたしは開いた口が塞がらないまま、何度か首を傾げる。


(いや、まぁ、まだ婚約破棄は成立していないけど)


 大きく息を吸い込んで、唇を引き結んでから、わたしは殿下に向き直る。殿下は相変わらず、澄ました表情でお茶を飲んでいた。


「それで、君を呼び出したのは他でもない。僕以外の男と情けを交わすのは止めてほしい」

「…………は?」


 思わずドスの利いた声が漏れ出た。


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