婚約者と親友に裏切られたので、大声で叫んでみました
(うそ! そんな、まさか)
バベル様が留学してきたその時、彼が皇太子だなんて情報は絶対に無かった。わが国でいう公爵や侯爵あたりの令息で、気楽に接してほしいと、そういう話だったというのに――――。
「そんな馬鹿な話、信じられるか!」
「馬鹿はおまえだ! 殿下がいらっしゃった当時、あれほど『誰に対しても横柄な態度を取るな』と言い含めておいたのに! 殿下が身分を明かされないのを良いことに、好き放題し、ご不興を買うとは!」
「……俺に対して横柄な態度を取ったことが問題なのではない」
バベル様はそう言って、わたしを庇うように前に立った。
「人を人とも思わない……その舐め腐った態度が気に喰わないと言っているのだ。おまえのような人間が治める国が帝国に属しているとは嘆かわしい。この国を『王国』として残す意味があるとは、俺には思えん」
「でっ、殿下! どうか……どうかそれだけは! こちらの愚息からは王位継承権を剝奪いたします! 私の責任の下、必ずや、帝国の名に相応しい王国へと変えて見せますので…………」
「当然だ。二度目はないぞ」
そう言ってバベル様は、わたしの手を取り歩き出した。魂の抜け落ちたような顔をしたシリウス殿下が、わたしたちのことを呆然と見送る様子がチラリと見えた。