婚約者と親友に裏切られたので、大声で叫んでみました
***

 星空の下、わたしたちは王宮の庭園を歩いていた。バベル様の手のひらは大きくて温かい。こんな風に男性に触れるのは初めてで、心臓がドキドキと高鳴った。


「どうして身分を偽っていらっしゃったのですか?」


 沈黙がもどかしくて、わたしはバベル様に問いかける。バベル様はクルリと振り返ると、小さく笑った。


「この国なら俺の顔を知る人間はいない。人を身分で判断する馬鹿は嫌いだ。だけど、帝都では皆が俺に媚びへつらうし、俺自身、自分の能力や適性を色眼鏡を掛けた状態でしか見られなくなってた。俺という人間を見極める――――それがこの国に来た理由だ」


 きっとバベル様は今、『皇太子』としてここに立っているのだろう。これまでとはオーラが違うし、言葉の一つ一つが重い。


「そしたら、クラスメイトにはめちゃくちゃな王太子がいるし、好きな子はそんな奴に馬鹿に騙されてるしで、色々困った」


 けれど次の瞬間、バベル様はこれまでみたいな人懐っこい笑みを浮かべながら、そんなことを言った。何とも思わせぶりなセリフに胸が大きく跳ねる。


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