婚約者と親友に裏切られたので、大声で叫んでみました
「どうせならクソ野郎! とか、テメェに王者の資格はねぇ! とか、もっと色々叫んどきゃ良いじゃん。泣いてばっかで気分晴れなかったんじゃねぇの?」


 バベル様はそう言ってニカッと笑った。きっと、わたしが来た時には既にバベル様がいたのだろう。羞恥心や罪悪感が一気に襲いかかった。


「申し訳ございません。一応確認したつもりだったのですが、まさか人がいるとは……」

「別に謝る必要なんてねぇよ。誰だって叫びたくなる時ぐらいあるし、あんたも人間なんだなぁって思ったぐらいだ」


 どうやらバベル様は本当に気にしていないらしい。顔を真っ赤に染めたわたしを余所に、小首を傾げて笑っている。


「あの……わたしを不敬罪に問わなくてもよろしいのですか?」


 いくら従兄弟で婚約者とはいえ、わたしが殿下に向かって放った言葉は明らかに行き過ぎている。というか死刑ものの暴言だ。叫んだ時は正直、もうどうなっても良いというか、自暴自棄みたいになっていたわけだけれど。


「ん? 不敬? 不敬って……あぁ、あのシリウスとかいう馬鹿男に対してってこと? そんなの問うわけないじゃん。明らかにあっちの方が悪いんだし、敬えなくて当然じゃね?」


 俺は絶対無理、って付け加えつつ、バベル様はコクコク頷いた。ほっとため息を吐きつつ、わたしは改めてバベル様を見つめる。


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