婚約者と親友に裏切られたので、大声で叫んでみました
「バベル様は事情をご存じなのですか?」

「んーー? これだろうなーーってのは何となく。ポラリス、さっき叫んでたし」


 バベル様はそう言ってポリポリと頭を掻いた。もしかしたら、知らなかったのはわたしだけなのかもしれない。そう思うと、身体がずどーーんと重く感じた。


「……っ! 失礼いたします」


 これ以上恥を晒したくはない。そう思って、わたしはバベル様の横をすり抜ける。
 けれど、バベル様はそっとわたしの後に続いた。背中にピンと緊張が走った。


「あの……」

「帰るんだろ? 送ってやるよ。この国も決して治安がいいとは言えねぇし。そんな明らかに『落ち込んでます』って顔した人間一人にしてたら危ねぇから」


 そう言ってバベル様はそっとわたしに手を差し伸べた。物言いは乱暴なくせに、彼の仕草や物腰はすごく上品だった。
 とはいえ、わたしはまだ公的には『王太子の婚約者』だ。彼と二人でいる所を誰かに見られるわけにはいかない。


「お申し出は大変ありがたいのですが……」

「分かった分かった。少し離れた所を歩くから心配するなって」


 バベル様にはわたしの懸念事項が分かったらしい。小さく笑いつつ、すぐに距離を取ってくれた。


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