やり手CEOはお堅い秘書を手放さない


 私はふぅっとため息をついた。

 社長の言葉の真意なんて考えても無駄だ。余計なことを考えずに仕事をしよう。やるべき事は山ほどあるのだ。





 一夜の過ちから数日が過ぎ、平常心で業務をこなせるようになってきていた。

 社長は出来事についてなにも言わないし、私も当夜の言動を彼に尋ねてはいない。

 知りたいけれど、自爆しそうで怖いのだ。

 いつも胸に秘めてることを言っていないといいのだけど、その可能性は低いと思える。

 尋ねれば、せっかく沈んでいる事実が浮上してしまい、お互いに困った状況になりかねない。

 だって私は『あなたが好きです』って、何度も心の中でつぶやいてるのだ。

 私に向けて笑ってくれた時。

 『よくやった』と褒めてくれた時。

 お茶をもっていって『きみはいつも俺が飲みたいと思っているときに、持ってきてくれる』と、ほっとした表情をみせてくれた時。

 ささいなことがうれしくて、数えればきりがないほどに胸中で告白している。

 だから、かなりの確率で口にしていると思うのだ。

 私は秘書として一緒に行動する中で知った、彼の人柄に心惹かれてしまっている。

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