やり手CEOはお堅い秘書を手放さない
シェア拡大にむけるたゆまない努力や、部下たちの進言を真摯に受け止める姿は、社長としてだけでなく、人として尊敬できる。
そして日ごろは穏やかで懐が深い面が目立つけれど、ときに非情な決断をする社長の痛みに触れることもある。
数ある中でも一番思い出深い出来事は5年前のことだ。
彼の秘書になった一か月後、初めて一緒に携わった事業だった。
レストランを建てるため、彼はその土地にあった年老いた夫婦が経営する食堂を意図的につぶしたのだ。
現地視察に同行した私が見た食堂の建屋は古く、現代の建築基準に満たないものだ。災害が起こればすぐに倒壊すると思えた。
それに老齢の夫婦のみで切り盛りしていたせいか、店内も掃除が行き届いていなかった。
このままでは衛生的な問題が起こると考えられるほどに。
そんな状態でも好立地のためか、そこそこの客足に支えられていた食堂を夫婦は手放そうとしない。
何度も足を運んで説得するも頑固に首を縦に振らないため、彼はおろし業者に手を回して食材などの流通を止めさせたのだ。