やり手CEOはお堅い秘書を手放さない
安価な食材や業務用資材を仕入れることができず、とうとう夫婦は経営が立ち行かなくなった食堂を閉めた。
この件で、彼は冷徹非情な社長だと評判になった。
『非情な手段をとった俺を、きみは軽蔑するだろうか』
そう口にした彼の哀しそうな瞳を忘れることができない。
『軽蔑なんてしません。非情とはいっても、結果的に社長は、彼らにとって何にも代えられないもの……この先の平穏な生活を提供したんですから』
早々に食堂を閉めなければ、老朽化した建物が崩れ、客ともども命の危険があったかもしれない。
衛生的なことで客とのトラブルが多発し、老夫婦は悲惨な運命をたどっていたかもしれない。
その前に最小限の痛みで新たな生活を送れるようにしたのだ。
食堂はつぶれてしまったけれど、料理を作って提供する場所はそこだけじゃない。実際に老夫婦は、子ども食堂の料理人として腕を振るっているのだから。
そこで活動できるように、社長が手を回したことを知っている。
『でもこれからも俺は、会社のために同じようなことを繰り返すんだ』