やり手CEOはお堅い秘書を手放さない


 けれど、早まった出発時間に合わせて私も業務を前倒しにしなくちゃいけない。各方面に連絡を入れて、スケジュール調整のお願いもしなくてはならない。

 時間までにこなすことがいっぱいで、思わず半泣きになる。

 急いで自分のデスクに戻った。
 



 そして約束の1時。

 前倒しにしたせいで昼ご飯も食べずになんとか業務をこなした私は、パーティ用の服に着替える間もなく社長室に向かった。

 新調したスーツに着替えた彼は、いつにも増してかっこよく見える。対して私は朝から着ている紺色スーツにコサージュをつけ、少々華やかにしただけだ。

「きみはその服で行くのか?」

 ん? と首をかしげる彼に『あなたが無茶を言うから、着替える時間が無くなった』なんて言えない。

「はい。平服というドレスコードに準じていますし、これで十分でしょう」

 パーティ用の衣装もシンプルなデザインを好んで準備しているので、着替えたとしても服の色が明るくなるくらいで大した違いはない。

 そう口にすると、社長は「きみらしいな」と柔らかく微笑んだ。

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