やり手CEOはお堅い秘書を手放さない


 パーティの主催者や出席者はみんな社長が目当てで、私は付属品なのだ。マナーや礼儀さえきちんとしていれば、私のことは誰も気にかけない。

 駐車場にはすでに運転手が待っていて、彼は恭しくお辞儀をする。

「お待ちしていました」

「いきなり時間を早めてすみません。今日も安全運転でよろしくお願いします」

 運転手に挨拶をして、私はいつも通りに助手席につく。

 社を出てしばらく走ったのち、車が止まったのは意外なところだった。

「え、ここはもしかして……」

「そう。俺の出発点と言えるところだ」

 5年前に彼が携わった事業、ファミリーレストランの一号店である。

 老夫婦の食堂が建っていたところは、まわりにあった古い建物も整備されてすっかり近代的に変貌していた。

 ランチタイムの終了が近いけれど駐車場は満杯で、店から出てくる人たちの顔は満足そうに輝いて見える。

「やっぱり、ここに建てて正解でしたね」

 主要道路沿いで役所などの公的機関やイベントホールなどの施設が近いここは、人も車も多く行きかう好立地なのだ。

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