やり手CEOはお堅い秘書を手放さない


「ここから会社の成長が始まったんだ。原点を忘れないように、何かを決めるときや事業を起こす前には、ここに足を向けることが多い」

 社長と初めて行った事業。私にとって思い出深いここが、彼にとっても重要なものになっていることがうれしい。

「では、新しいことを始めるつもりなんですね」

「……ああ、心を決めたよ。ずっと思案してきたことを試みるつもりだ」

 彼はレストランに出入りする客の姿を決意に満ちた目で眺めている。そんな表情を見れば、私もやる気がみなぎってくる。

 いつも通り、というより……今まで以上に彼をしっかり支えたい。

 マクレガーのパーティ前にここに来たということは、そこと関連する事業を始めるつもりかもしれない。

「また忙しくなりますね」

「そうだな。多分、きみのほうが心身ともに忙しくなる」

「私、ですか? どうして」

 私に向かって微笑む彼の目がキラリと光った気がした。まるで、「覚悟しろよ」と言っているかのようで、背筋がぞくっとする。

「なぜかは、そのうちわかる……さあ、パーティにいこう。遅れるといけない」

「……はい」

 心身ともに忙しくなるって、どういうこと? 

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