やり手CEOはお堅い秘書を手放さない


 もうだいぶ慣れてきたけれど。

 いつも通り、秘書としてのふるまいをするべくきりっと背筋を伸ばし、彼の隣から一歩後ろに下がって集まってくる人たちに目礼をした。

「新藤さん、お久しぶりです。お元気でしたか」

 人懐っこい笑顔を浮かべる初老の男性は先代社長の友人だ。

「はい。当節はいろいろと大変お世話になりました。コバルトユニオンが成長したのも駒田さんに助けていただいたおかげです」

 彼の両親は5年前に他界している。若くして会社を引き継いだ彼に様々なアドバイスをしてくれたのが駒田だ。

 駒田と話をしている間にも招待客たちがどんどん集まってくるので、彼を中心にした老若男女の人の輪が膨らんでいく。

 その中でも若い女性たちの彼を見る目は、熱っぽい。視線でハートを射止めようとする、ギラギラした感情が見え隠れする。

「……そういえば、結婚の噂を耳にしましたよ」

 誰かが放った結婚というワードに、私の耳がびくっと反応する。

「ご存じでしたか。縁談に関しては、祖母に一任しているのですよ。祖母は私よりも人を見る目が確かなので、社にとっても、私にとっても、最良のお相手を見つけてくれます」

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