やり手CEOはお堅い秘書を手放さない
彼の縁談はわかっていたことだけれど、公の場ではっきりと聞いてしまうと、胸が暗く沈んでしまう。
開始のアナウンスが流れ、マクレガー社長のあいさつが始まった。唇をきゅっとひきむすび、まっすぐに前を見る。
『本日発表のテーブルウェアは、デザイナーでありわが娘でもある、須田弥生が手がけました』
社長に紹介されて前に進み出た彼女はマイクを握り、にこやかにスピーチを始めた。
すごくきれいな人だ。才知豊かで性格もよさそうに思う。完璧に、彼とお似合いだ。
最初から戦うつもりはなかったけれど、堅くて仕事しか取り柄のない私は、容姿も家柄も才知も彼女に大敗している。
須田社長から歓談の合図がなされ「挨拶に行くぞ」と声をかけられた私は、上座に向かう彼の後に続いた。
「新作のリリースおめでとうございます」
「新藤さん、ようこそおいでくださった。こちらは娘の弥生です」
「先ほどスピーチなさったので、存じていますよ。はじめましてコバルトユニオンの新藤です。彼女は私の秘書の夏目瑠伽です」
突如私まで紹介されたので内心驚きながらも微笑み、彼らに会釈をする。
「はじめまして。よろしくお願いします」