やり手CEOはお堅い秘書を手放さない
普段はそんなことしないのに、少し焦ってしまった。縁談相手だから、秘書の私とも深くかかわる可能性があるから……?
「こんにちは。噂のやり手CEOである新藤さんとお会いできて、光栄です」
彼を見る彼女の笑顔は、キラキラ輝いて見える。
「縁談をいただいているお相手が見目麗しくて、大変幸せです」
一緒に挨拶をした私のことは一切見ない。完全に無視しているように思え、少し嫌な気持ちになった。
「それは過分な評価ですよ」
「そんなことないです。新藤さん、よろしければふたりでお話しませんか。食器の特徴など、ご案内します」
「それでは、夏目も一緒にお話をうかがいましょう」
私の名が出て、ぎょっとしてしまう。
二人きりになりたいという縁談相手の言葉をすぱっと断るなんて、いいのだろうか。
しっかり公私の線を引く彼らしいといえばそうだけど、私はお邪魔虫になりそうで、身の置き所が難しい。
食器の絵柄などの説明をする彼女はにこやかな表情を崩さないけれど、時折私に向けてくる視線からは「少しは気を利かせなさいよ」という念がしっかり伝わってくる。
どうしよう。離れたほうがいいのかな。