やり手CEOはお堅い秘書を手放さない


「はい。少しだけなら。なんでしょう?」

「明日、土曜日なんだけど、あなたはなにか用事ある?」

 土曜日はたまに仕事をするが、明日の予定はない。友人との遊びの約束もない。完全ぼっちの私だ。社畜ともいう。

「いえ、特にないですよ」

「実はね、あなたをうちに招待したいのよ」

「ええ!? 私をですか?」

「私の記念すべき70歳の生誕祭があるの。瑠伽ちゃんに祝ってほしいわ。来てくれないかしらねぇ? 孫を紹介したいし」

 つぶらな目をキラキラさせている酒井さんに、思わず苦笑を返す。

 誕生日を口実にして、以前から話している孫に会わせたいだけかも……。 

 でも用事もないと言ったのに誕生日祝いは断りにくい。

 それに酒井さんの孫に会うことが、もしかしたら社長への思いを断ち切るきっかけになるかもしれない。

 でも会ったからといって、何かが始まると決まったわけじゃないから、気楽に考えればいいのかも。

「明日なんて急で悪いんだけど、招待を受けてくれないかしらねぇ?」

 パート清掃員の酒井さんは勤務が不規則なようで、私と会う機会が少ない。誘うのが前日になってしまったのは仕方がないことだろう。

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