やり手CEOはお堅い秘書を手放さない


「酒井さんの生誕祭だもの、喜んで伺わせていただきますよ!」

「よかった! じゃあ、土曜の11時30分ね。すごく豪華な食事を提供するから、期待してて。ここにきてちょうだい」

 住所と思しきメモを渡して笑顔で去っていく酒井さんを見つめながら、誕生日プレゼントは何にしようと考えた。




 業務をこなして迎えた定時、先に言われていた通りに社長室に訪れた私を、彼はデスクの上をすっかり片付けて待っていた。

「社長、ご用件はなんでしょうか」

「出かけるから、一緒に来てくれ」

「え、どこに、何の用事でしょう。準備するものは」

「何も準備するな。必要なのは、きみだけだ。行くぞ」

「あ、じゃあ、バッグだけ取ってきます」

 急いでバッグを取り、社長室の前で待っていた彼と一緒に階下におりる。

 地下駐車場に下りると、彼は白い車に乗るように促した。国産車で一番の高級車であるそれは、彼の所有する車だ。

 社用で車を利用するときはタクシーか、運転手付きの社用車に乗るのだ。個人所有のそれに乗るべきか戸惑う。

「ひょっとして、私が運転手でしょうか? ペーパードライバーなんですが、平気でしょうか」

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