やり手CEOはお堅い秘書を手放さない


 社長秘書である私は、主に重役や社長と会うことが多い。その彼らは、私に対して特別な反応をしめしていない。

 今日のパーティでも、話しかけられることはなかった。だからそんなふうに思われているなんて、意外でしかない。

「きみは、いつ会っても凛々しくて近寄りがたい雰囲気がするのに、電話の声やメールの文章などは柔らかい。それに取引先への気遣いもマメにしてるだろう。お礼状を送ったり、トップにバースデーカードを送ったり。俺がメーカーと電話をすると、たいていきみのことを尋ねてくる」

「それは、ギャップがひどいってことですかね……」

「いい意味でのギャップだ。俺の仕事が成功しているのは、きみのサポートのおかげだ。俺は電話もメールもそっけなく、非情さが前面に出ているからな。祝いのカードなんか、送ろうと思わない」

「そんな……なんだか照れくさいです」

 彼の秘書として工夫してきたことが認められるのは、素直にうれしい。

「それで、よくきみの誕生日やプライベートを尋ねられるんだが、きっぱり断っている。教えたほうがいいか? きみを見初めた人もいるかもしれないし」

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