やり手CEOはお堅い秘書を手放さない
「いえ、全然! そのままきっぱり拒否してください」
冷や汗をかきながらぶんぶんと手を振っていると、不意に車が止まった。遠出をすると言っていたのに、まだ10分も走っていない。
「社長、どうかしたんですか?」
「降りてくれ。目的地に行く前に、きみの武装解除をする」
「はい?」
「これからの時間を過ごすのに必要なんだ。そこのショップに行こう」
車から降りた私を連れて、彼は目の前にあるショップに入った。
店内には上質な衣服と高価なアクセサリー類が上品に展示されている。私が利用しているショップとは一線を画す高級なムードが漂っていた。
武装解除って、まさか……。
「いらっしゃいませ。新藤さまですね。お待ちしていました」
奥から品のある女性が出てきて、店長の桐谷だと名乗った。
「彼女は夏目です。手筈通りお願いします」
「はい。お任せください。夏目さま、こちらにどうぞ」
「ほら、行ってこい」
訳が分からずに戸惑っていると背中をそっと押され、振り返ると彼は微笑みながら小さく手を振った。
奥にはドア一枚隔てたスペースに、フィッティングとメイクができる設備がある。