やり手CEOはお堅い秘書を手放さない
「……夜景?」
「今日はきみの誕生日だろう。俺からのささやかなバースデープレゼントだ。いつもよく頑張ってくれているから、日ごろのお礼も兼ねてる」
私を見つめる彼の表情が照れているように思う。
「誕生日……ですか……」
「ひょっとして、自分の誕生日を忘れていたのか?」
「いえ、そんなことないです。いつもひとりでケーキを食べるくらいなので、今日もそのつもりでいて……。でも社長が誕生日を覚えていてくれて、おまけに祝ってくれるなんて、すごくびっくりしてて……こんな素敵な服までも……なんて言ったらいいのか」
感激して潤んでしまった目をごまかすように、瞬きをくりかえした。
「当然だろう。きみは、俺にとって、手放したくない大事な人なんだ」
彼は、また勘違いしてしまう言葉を口にする。
けれどずっと交わしている会話の流れから察するに、〝秘書として〟の枕詞を省かれているのは明確だ。
人の心を惑わすのが上手だから、困る。
でも秘書に対して、こんな気遣いをしてくれる彼のことがますます好きになってしまいそうだ。彼のことは、あきらめなくてはいけないのに。