やり手CEOはお堅い秘書を手放さない
柔らかい彼の唇が私の思考を真っ白に染める。
貪るような口づけをして離れた彼が私の頬に手を添えた。じっと見つめてくる目がとても真剣で怖いくらいだ。
どうしてキスを? ヘリで夜景を眺めるシチュエーションのせい……?
「これで、あの夜のことを思い出せたか?」
「……いいえ。社長は、私に思い出させるためにキスしたんですか?」
「そうじゃない。でも思い出してほしいと思ってる。あのときに俺が口にしたこと、すべて本心だから。決して気の迷いじゃない」
彼の表情が切なそうにゆがんで見える。こんなふうにされれば、いくら鈍感な私でも、胸に秘めている気持ちに気づいてしまう。
彼がほんとうに、私を……? 信じられない。
でも私の頬に触れる手と真剣なまなざしは、たしかな愛情を伝えてくる。
一夜の会話には、私の一方的な思いだけじゃなく、彼のもあったということ?
そんな大切なことを忘れてしまうなんて。
あの夜、お互いになにを言ったのか本気で思い出そうとするけれど、車に乗っていたり、彼の部屋に入るところだったり、断片的なシーンしか浮かんでこない。
「すみません……私……二度とお酒を口にしません……」