やり手CEOはお堅い秘書を手放さない


 情けなさ過ぎてしょぼんとする私の頭を、彼はぽんぽんと撫でた。

「思い出せないなら仕方がない。だから、これから先の飲酒は、俺と一緒にいるときだけ許してやろう。わかった?」

 声も表情も柔らかくてほっとする。彼は私を責めているわけじゃない。

 けれど、私に対する気持ちがわかったところで、彼に縁談がある事実は変わらない。

 私は結婚を申し込まれてはいない。おぼろげに気持ちを伝えられただけだ。

 彼は、一夜のことを思い出させてどうするつもり……?

 〝でも、社長には縁談がありますよね?〟

 そう聞きたいけれど言葉にできない。

 問えば答えてくれるだろう。けれど、今は彼の愛情を感じられたことがうれしくて、決定的な言葉を耳にしたくない。

 会社を盤石にするためには有益な企業の社長令嬢との結婚が欠かせないだろう。

 もう少しの間……社長の結婚が確定するまでは、彼の思い人でいたい。

 夜景コースを回ったヘリから下り、彼と一緒にレストランで夕食を食べ、キス以外はなにごとも起こらないまま帰宅することになった。



 
 翌日の土曜日。

 今日は酒井さんの生誕祭だけれど、寝不足で気分がどよーんとしている。

< 38 / 49 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop