【短編】最強総長は隠れ狼姫を惑わしたい。
 今すぐ助けたい。
 でも、圭が目を覚まさないと人質にされてしまうし……。

 それに、やっぱりケンカが強いことを迅に知られるのが怖い。

 本当は守りなんて必要がない可愛げのない女だなんて……。

 幻滅されて、嫌われたらどうしようって思いが無くならない。


「迅……」

 胸の内の葛藤が苦しくて、涙が滲む。

 そんなあたしに、迅はいつもの優しい笑みを向けてくれた。

「大丈夫、だから。そんな顔すんな」
「っ!!」

 全然大丈夫じゃなさそうなのに、こんなときでもあたしを気遣ってくれる迅。

 苦しいほど胸が熱くなって、涙が零れる。


「いいカッコつけてんじゃねぇよ!」
「ぐはっ!」

 また迅の腹に拳が入り、今度は少し急所を突かれてしまったみたいだ。

 迅の綺麗な顔が痛みで歪んだ。

「迅っ!」

 瞬間、全てが吹き飛んだ。


 迅の前では女の子でいたいとか、嫌われたくないとか。

 そんな思いよりも大事な気持ちが沸き上がる。

 迅の辛そうな顔は見たくない。

 あたしも、迅を守りたい!!


「うっ……あれ? あ、迅さん?」

 そのとき、丁度圭が意識を取り戻した声がした。

 その声を耳にした瞬間、あたしは考えるより先に体を動かす。
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