【短編】最強総長は隠れ狼姫を惑わしたい。
 あたしを拘束する三谷に頭突きを食らわせて、彼の手が緩んだ隙に抜け出す。

「ぐぁっ!」

 そしてすぐに圭の所に行った。

 圭の側にいた男は一人。
 何が起こったのかすぐに理解出来ないでいる男を倒すのは簡単だった。

 戸惑っている男を蹴り飛ばすと、圭の腕を掴んで立たせる。

「ちゃんと、あたしの近くにいて!」
「え? リィナ? なんで……?」

 驚き戸惑う圭に説明している暇はない。

 あたしはその腕を掴んだまま今度こそ迅の元へ向かった。


「な、なんだこの女⁉」

 戸惑いながらも対応しようとしている数人の男達。
 あたしは圭の腕を離すと、そいつらの急所を確実について倒していく。

 後には、呻きうずくまる男達しかいなかった。


「……リィナ? お前……」

 後ろから迅に呼び掛けられる。

 その声には驚きしか感じられなくて、今のあたしを見てどう思ったのかは分からない。

 表情には何がしか現れているかもしれないけれど、だからこそ迅の顔を見るのが怖かった。


「ごめんね、黙ってて」

 表情から嫌な感情を読み取ってしまうかもしれないのが怖いから、あたしはそのまま迅を見ずに話し出す。

「あたし、実は中学では裏番って呼ばれるくらいケンカが強かったの。だから、本当は迅に守られなくても平気なの」

 一度言葉を止めて、震えそうになる声を落ち着かせた。
< 51 / 56 >

この作品をシェア

pagetop