干物のミカタ ~副社長! 今日から私はあなたの味方です!~
「だから、プレゼンでは……」

 美琴はそこまで言ったところで、ふいに口ごもる。


 ――だめだ。泣いちゃダメだ……。


 心ではそう思っていても、美琴の瞳には涙が込み上げていた。


「美琴ちゃん? どうしたの?」

 美琴は言葉に詰まって、雅也の問いかけに答えられずにいた。

「今、どこにいるの?!」

「会社の……近く……」

 美琴は震える声でなんとかそこまで言い、ビルの壁にもたれて座り込んだ。

 握りしめたスマートフォンから、雅也の声が聞こえる気がする。

 それでも美琴は、座り込んだまま動けずにいた。


 ――プレゼン、参加できるのかな……。


 しばらく壁にもたれたまま膝を抱えていた美琴の耳に、名前を呼ぶ声が聞こえた気がした。

「美琴ちゃん!」

 美琴ははっと我に返り、顔を持ち上げる。


 見ると、目の前に止められた車から飛び出してきたのは雅也だった。

「水上さん……? なんで?」


 そうつぶやきながらよろよろと立ち上がった美琴の身体は、次の瞬間雅也に力いっぱい抱きしめられていた。
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