干物のミカタ ~副社長! 今日から私はあなたの味方です!~
「何をそんなに苦しんでるの? なんで一人で泣いてるんだよ……」

 雅也は美琴をぎゅっと抱きしめながら、独り言のように耳元でつぶやいた。


 ――水上さんの方が、泣きそうだ……。


 美琴は雅也の胸に顔をうずめ、しばらくその鼓動の音を聞いていた。


 『プップッ』とクラクションの音が車道から響き、美琴は慌てて雅也から離れる。


「ご、ごめんなさい……」

 手で涙を拭い顔を上げると、雅也は眉を下げて泣きそうな顔でほほ笑んだ。

「送るよ」

 雅也は路上に停めている車を指差す。

「でも……」

「それぐらい良いでしょ? そんな状態で一人で帰せないよ」

 雅也はふっと笑いながら美琴の顔を覗き込んだ。


「へ?!」

 美琴は急に恥ずかしくなり、目も鼻も真っ赤になった顔を両手で覆った。

 その様子を見て雅也はにっこりと笑うと、美琴の肩を優しく促す。

 美琴はそのまま助手席に腰をかけた。
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