干物のミカタ ~副社長! 今日から私はあなたの味方です!~
 雅也の車の助手席に座り、さっきから美琴はもじもじと落ち着かない。

「そんなに俺の隣は居心地悪い? ちょっと傷つく……」

 雅也はサラサラの髪を揺らしながら、すねる様に言った。

「ち、違いますっ!」

 美琴は慌てて雅也を振り返り、その距離感に頬を赤くしてまた下を向く。

 雅也は美琴の様子にぷっと吹き出して笑った。


「何があったのか聞いても良い?」

 しばらくしてから雅也が口を開く。

「あの、どうしたら良いのかわからないことがあって……」

「それって……俊介とのこと?」

 雅也は一瞬躊躇(ためら)ってから副社長の名前を出す。


「副社長との事、というか……仕事の事というか。私は今まで自分の想いにまっすぐに突っ走って来たんです。でも、それを貫くことで逆に迷惑をかけてしまうかも知れなくて……」

 車は赤信号で停車した。

 雅也は窓に肘を乗せ、額に手をやってしばらく考え込んでいるようだった。

 美琴はそっと雅也の横顔をうかがう。
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