干物のミカタ ~副社長! 今日から私はあなたの味方です!~
「それで良いんじゃないかな」

「え……」

「美琴ちゃんの思うように進めば良いじゃないかな。それを迷惑に思う様な奴じゃないよ」

「そのせいで、副社長の社内での立場が悪くなってもですか?」

「そうだね……。ねぇ、俺の話をしても良い?」

 雅也がぱっと顔を上げ、美琴は頷いた。


「俺はね、今まで全部父親の言いなりだった。でもね。今回の壁面装飾の話を聞いた時、初めて自分から『この仕事がしたい』って思えた。そして、初めてまっすぐに人と向き合いたいって思えたんだ」

 雅也は美琴の顔を見つめる。

「だから今日、初めて父親に反抗してきた。ずいぶんと遅い反抗期だけどね!」

 雅也はいたずらっぽくにやりと笑う。


「これは美琴ちゃんのおかげだよ。あの渓谷にいる時だけしか、自分自身に戻れなかった俺を、美琴ちゃんは変えてくれた。きっと……俊介も同じなんだと思う」

「水上さん……」

 車が動き出し、雅也はハンドルを握り直した。
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