プリズムアイ


「あー--最高、店員さんまた生2つで」

はいよーと厨房の奥から店主の声が聞こえた。
彼女はいつもより元気がなかった。商談はご破算になっていないはずだ。課長の機嫌が悪くなかったからそう思えた。
それにしては呑みっぷりがたりない。商談が成立したときはもっと一気に生を頼む。

「新人ちゃん、水島さんから見てー--どー--ですかー--?」

その声色は明らかに不貞腐れていた。
彼女なりに苦労していることが伺える。あたりさわりなく答える、それこそ機嫌を損ねないようにだ。

「素直でいい子だと思ったけど、大変そうだよね。美司がから滑っているところをみると。あんなに熱心に仕事教えているのに」

「やっぱりから滑ってますよねー-私。なにも響いてないのわかるんです、なんでも生返事だったし流石に堪えるわ」

へいおまちとやって来た肉を迎え入れて網に肉を置いていく。どんどん丸く縮んでいくそれをしっかり見届けてから口に運んでいく。生ビールも一緒に届いて一気に飲み干していた。
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