婚約者の浮気相手が子を授かったので
「そうだ。君のお腹の子が王族の血を確実に引いていることを確認するために、医療魔術師が魔力鑑定を行う」
「クラウス。その『魔力鑑定』とは、一体何なの?」
 どうやらアデラは『魔力鑑定』を知らないようだ。この言葉は一般的には浸透していない。『魔力鑑定』とは、親子関係を確認するための方法であり、やたら使われてしまうと争いごとの元になるためである。王族として生まれる子は、産声をあげる前に母親のお腹の中でこの『魔力鑑定』を受けるのが習わしだ。
 それは、万が一のことを想定してのこと。
「魔力は親から子に引き継がれる。引き継がれるということは、どこか似た部分があるということだ。その似た部分を確認することを『魔力鑑定』と呼んでいる。魔力を色で表現する者もいれば、香りで表現する者もいるが。親子であれば、その色や香りが同じになるんだ。アデラの子が間違いなく僕の子であることを、父上たちに証明しなければならない。だから『魔力鑑定』をする必要がある。あまりにも胎児が小さいうちは、魔力も安定せず鑑定ができなかったが、胎動を感じるようになる頃であれば、鑑定の結果も間違えないと医療魔術師は言っていた」
 アデラの顔色がみるみるうちにかわっていくことに、クラウスは気づいた。それでも彼は言葉を続ける。
「君の子が間違いなく僕の子であることを証明する。それが証明されれば、父上も母上も、君との結婚を認めてくれるし、君は僕の正妃になれる」
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