【コミカライズ決定】婚約者の浮気相手が子を授かったので
◇◆◇◆

 とにかく身体も熱くて目の前は真っ暗であった。同時に痛み出す身体の節々。
 熱くて暗くて痛む世界。
 この世界から助けて欲しくて、ファンヌは助けを呼ぶ。すると、優しい手がファンヌの頭を優しく撫でてくれる。さらに、冷たいものを額に当てて、熱を取り去ろうとしているようにも感じた。
 そこからは日なたと葉っぱのにおいが交じり合った、独特の香りがした。それは、毎日のように薬草に触れている彼の匂いによく似ていた。
(先生……。エル……)
 エルランドなら熱くて暗くて痛む世界から救ってくれるかもしれない、とファンヌは思い、彼に助けを求める。
 その助けが彼に届いているのかどうかもわからない。声が出ているのかさえもわからない。
 暗くて何も聞こえない世界。
 不安は募るばかりで、目尻からは少しだけ涙が溢れてくる。胸にはチクッとした痛みが走る。
 口の中にじんわりと苦みが広がった。
 必死に彼の名を呼び続ける――。

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