【コミカライズ決定】婚約者の浮気相手が子を授かったので
「どうでもよくなってしまうの範疇(はんちゅう)を超えています。先生、ご飯はきちんと食べているんですか? どう見てもこれ……。お菓子のゴミじゃないですかっ」
 ファンヌが学校を去って約半年。この男が生きていたことが奇跡なのかもしれない。
「ご飯……。いつ、食べただろうか。お菓子は食べている」
「私、売店で何か買ってきますから。先生はそのゴミをこっちのゴミ袋に入れておいてください」
 ファンヌはバタンと乱暴に研究室の扉を閉めると、売店へと向かって走り出した。売店はこの建物の中央、つまり時計台の下に位置する。
(まさか、先生があんな状態になっているなんて……)
 突然売店に現れたファンヌに気付いた学生たちもいたが、彼女が鬼気迫る表情をしながら食べ物を購入していたため、誰も声をかけようとはしなかった。
 といっても、昼過ぎの中途半端な時間。売れ残っているのはパンがほんの少し。お菓子よりはマシだろうと思い、それを手にした。それから幾本かの野菜汁も。野菜汁は、野菜をぎゅっと凝縮して汁状にして飲み物にしたもの。時間を何よりも欲しがる研究者には重宝されている飲み物である。
(まあ、先生のことだから。自分で調薬した薬で生き延びそうだけど)
 だが、薬草から摂取できるものと食べ物から摂取できるものは異なる。購入した食べ物を両手で抱えながら、エルランドの研究室へと戻った。
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