【コミカライズ決定】婚約者の浮気相手が子を授かったので
「先生。買ってきましたよ」
 なんとかテーブルの上の大きなゴミはなくなっていた。ファンヌは研究室をざっと見回して、食べ物を置けるような場所を探す。なぜか本棚が空いていたので、仕方なくそこの一つに食べ物を置いた。
 それから急いでゴミを片付けテーブルを拭き上げ、人が使える状態にする。ソファには少しエルランドの着替えが散乱しているようだが、エルランド自身が座る分には問題はないだろう。
「先生、お茶、淹れますね」
「ああ。頼む。そこにある茶葉と薬草は適当に使っていいから」
 特にこの東側の研究室には、各部屋に水道が備え付けられている。というのも、彼らの『研究』に『水』は欠かせないものだからだ。
 ファンヌはエルランドの表情を見て、彼が疲れていることだけはわかった。とにかく、口当たりがよく、疲労を回復させるお茶を『調茶』しようと、エルランドが『研究』のために採取してある『薬草』と『茶葉』に手を伸ばす。彼の研究室は、入口から一番遠いところに彼の研究用の机が置いてある。その両脇に、本棚と薬草棚がある。不思議なことに、以前はびっちりと本が詰め込んであった本棚には空きが多い。そして今も、薬草棚には必要最小限の薬草しか置いてない。そこから必要な薬草を手にし、茶葉と合わせて『調茶』する。
「先生、お茶が入りました。それから、先ほど売店で買ってきたパンと野菜汁です」
「やはり。ファンヌが淹れてくれたお茶は落ち着くな」
 銀ぶち眼鏡の下の細い目がさらに細くなった。
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