婚約者の浮気相手が子を授かったので
「私はベロテニアの者じゃないからね」
「え、そうなんですか?」
 そう言われると、そのようなことをオスモが口にしていたような気もする。以前、ここで初めて迎えた冬で体調を崩した、と言っていたような気もする。
「でしたら。見ていただいた方が早いですよね」
 ファンヌは、ワンピースのポケットにいれていた『薬』を取り出した。
「こちらです」
「ちょっと、この机の上で広げてくれるかな?」
「はい」
 ファンヌは促されるまま、先ほどの『薬』を机の上に広げた。
 粉の塊のように見える白い『薬』。
「粉薬のようだな」
「そのようですね。ですが、『違法薬』には見えないのです。あれには、色が濃いという特徴があります。『違法薬草』を使ったとしても、ここまで綺麗な『白色』を出すことはできません。違法と名の付くものを使うと、どうしても色がくすんでしまいます」
「ファンヌ嬢の言う通りだな。『違法薬』のようには見えない。これが巷で出回ったとしても、取り締まるのは難しいだろう」
「そんな……」
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