【コミカライズ決定】婚約者の浮気相手が子を授かったので
 広大な茶畑や薬草園を見渡せる少し小高い丘の上。鉄格子のいかにもという門から中に入ると、緑の芝生と大木が目に入る。そしてベージュ色の外壁で三階建ての屋敷の隣には、広々とした平屋の建物。
「向こうが、『調薬』の工場ですね。母からの手紙によると、あそこで茶葉の選別なども行っているようです」
 一つ一つ説明をするファンヌの口調は穏やかだし、どことなく口調も軽い。やはり、懐かしい場所に戻ってきた安心感があるのだろう。
 屋敷の入り口のドアベルを鳴らすと、使用人ではなくヒルマが現れた。
「お帰りなさい、ファンヌ。そして、いらっしゃい、エルさん。もう、待ちくたびれたわ」
「お母様……。先生をそんな風に呼んでいたんですか? いつの間に?」
「いやだわ、ファンヌ。あなたにとっては先生かもしれないけれど、私にとっては先生ではないんだもの。あなたの、婚約者でしょ? 名前で呼ぶのが筋というものではないの?」
「だからって……」
 ファンヌは頬を膨らませてぷりぷりと怒っている。
「エルさんも、お母様が変なこと言ったら、黙ってないで怒っていいですからね」
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