【コミカライズ決定】婚約者の浮気相手が子を授かったので
 エルランドが答えると、ヒルマは「そう」とだけ答える。相変わらず、ヘンリッキは難しい顔をしていて、何を考えているのかわからない。
『こちらに来て気づいたのですが……』
 話題を変えようとしたのがエルランドであったことに、ファンヌは少々驚いた。だが、どうやらエルランドはこのオグレン領に張られている結界に興味を持ったようで、それを維持しているのがハンネスという話を、ファンヌも初めて耳にした。
 こちらに戻ってきてから、ハンネスは『医療魔術師』というよりは『魔術師』として活躍しているようだ。
 だが、パドマを離れた家族たちが、こちらで楽しそうに暮らしていることに、ファンヌもほっとした。

 馬車がカタンと音を立てて止まった。オグレン領からパドマまでは、馬車で丸一日かかる。
 馬車の扉が外から開かれ、懐かしいパドマの空気に触れた。だが、外は闇に包まれかけていた。
 王都パドマにあるオグレン侯爵家の別邸。今、その屋敷はひっそりとしている。
「お帰りなさいませ、お嬢様」
 屋敷の管理人として残っている老夫婦がファンヌたちを迎えてくれた。あれだけいた使用人は皆、オグレン領の方へ戻っている。今は、パドマに残ることを希望した老夫婦が、屋敷の手入れを行っているのだ。
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