【コミカライズ決定】婚約者の浮気相手が子を授かったので
「そんなの……。違うに決まっているでしょう」
 ファンヌは思いきりクラウスの足をヒールのかかとで踏んづけた。慣れないヒールを履いてきてよかったと、ファンヌはこのときばかりは思った。
「くっ」
 クラウスの力が緩んだ瞬間、ファンヌは彼の腕から逃げ出した。
「エルさん」
 エルランドの元に駆けつけようとしたものの、次は騎士団の人間によってファンヌは拘束されてしまう。
「危ないから、近づかないように」
 それが彼らの言い分だ。だが、今のエルランドがまだ危険ではないことは、ファンヌの方がよくわかっている。
「うぅ……」
 騎士達に囲まれて姿は見えないが、先ほどからエルランドの苦しそうな声が聞こえてくる。
「エルさん」
「こら、暴れるな」
「エルさん」
「取り押さえろ」
 ファンヌがエルランドの名を呼ぶたびに、騎士達は怒号をあげる。エルランドがファンヌの声に反応しているようにも見えた。
「うわっ」
「なんだ。こいつ」
 突然、エルランドを取り押さえていた騎士たちが、次々と後方に下がり始めた。
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