ビター・マリッジ

お風呂上がりだからか、これまでワックスで整えられた髪型しか見たことのなかった幸人さんの前髪が、すとんと額に落ちている。

長めの前髪の隙間から覗く、涼やかな切れ長の瞳は、ベッドに組み敷く私のことを無感動にジッと見ていた。

温度の感じられない幸人さんの目を見つめ返しながら、私はひどく不安になった。

親族の顔合わせで姉の婚約者として出会ったときは、優しい目をして微笑んでいたはずの幸人さん。そんな彼が、正式に妻となった私の前では全くと言っていいほど笑ってくれないからだ。

結婚式のときだって、私の両親や式に訪れたゲストには笑顔を振りまくくせに、彼らがそばを離れると途端にすっと無表情になる。

だから私は、結婚式の間中ずっと不安で仕方がなかった。幸人さんは、本当に私なんかを妻にしてよかったのか、と。

幸人さんの隣で終始黙ってうつむいてばかりいた私は、挙式形態が神前式でよかったと心の底から思った。

重たい文金高島田と大きな綿帽子が、不安で強ばる顔を式の間中隠してくれていたから。

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