ビター・マリッジ

店の予約……?

まさか幸人さんがそんな段取りを立ててくれていたとは思わなくて、ドキッとした。

てっきり幸人さんの気まぐれでランチに誘われたのかと思っていたけど、少しは私のことも考えてくれていたのだろうか。

他の女性に優しく笑いかける幸人さんの姿に動揺して、惨めになって逃げ出してしまったけれど、じっと堪えてあのままロビーで待てばよかった――?


「ごめんなさい。予約した店は?」

「あぁ。代わりに、仕事がてらそこで秘書と食べた」

「秘書……」

キャンセルせずに済んだのならよかったけど。

私の代わりに食事をした秘書というのは、幸人さんが優しく笑いかけていたあの綺麗な女性だろうか。

私が約束をすっぽかしたから、幸人さんは彼女と……

幸人さんがあの綺麗な女性と食事を楽しんでいるところを想像したら、複雑な気持ちになる。

きっと、私と食事するよりも彼女とのほうが楽しい時間が過ごせただろう。それが仕事の打ち合わせだったとしても。

考えれば考えるほど、自分が惨めになっていく。

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