ビター・マリッジ
お風呂から上がって寝室に行くと、私よりも先にお風呂を済ませた幸人さんが、ベッドサイドのカウチに腰掛けて本を読んでいた。
読書に集中している幸人さんの横を素通りしてベッドに行こうとすると、私に気付いた彼が振り向く。
黙って先に寝てしまおうと思っていたけれど、一度目が合ってしまっては無視することもできなかった。
「おやすみなさい」
「もう寝るのか?」
「はい。明日も仕事なので」
機械的に言葉を返して、ベッドに入る。
掛け布団をかぶって横になろうとしていた私は、カウチに座った幸人さんがまだこちらを見ていることに気が付いた。
今夜はあまり幸人さんとは話さずに眠りにつきたい。
そうしないと、彼のジャケットから香ってきた花のような香水の匂いについて、また深く考え込んでしまうから。
一度目が合ったものの、さりげなく幸人さんから視線を逸らして布団を被る。