ビター・マリッジ
心を無にしてさっさと寝てしまおう。

目を閉じると、カウチの軋む音がして、幸人さんの気配がベッドに近付いてきた。

ベッド脇に立った幸人さんの無言の圧を感じて、閉じた瞼がヒクヒクと引き攣る。

ふっと息を漏らす幸人さんを無視して目を閉じ続けていると、彼が掛け布団を捲ってベッドに入ってきた。

幸人さんもそろそろ寝るのだろうか。

目を閉じたまま、寝返りを装って幸人さんに背を向ける。

横向けに寝転んで身を固くしていると、なぜか彼が私のそばへと寄ってきた。

背中に、ほんのりと幸人さんの体温を感じる。普段は広いベッドの端と端で離れて眠るのに、今夜の幸人さんはいったい何を考えているんだろう。

少し背中を丸めて身体を縮めると、幸人さんの手が私の首の後ろに触れた。

お風呂に入ったはずなのに、もう冷えてしまったのか、首筋に触れた幸人さんの手が氷のように冷たくて、肩が大きくビクリと跳ねる。

口元に両手を押し付けて、なんとか悲鳴だけは堪えたものの、私の狸寝入りは幸人さんにバレてしまった。


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