BでLなゲームに転生したモブ令嬢のはずなのに
 ――せっかく大好物の世界に転生したのに、それを目にすることなく死んでしまったら、死ぬに死にきれない。むしろ、もう一度転生したい。っていうか、この世界のループでいいんだけど。

 そうやってジーニアが妄想に耽っていうるうちに、家族で兄の就任を祝うケーキを食べる会は、お開きとなった。
 いつの間にか父親と兄はケーキではなく、高級なお酒を手にしているし、それに呆れて母親はこっそりと自室に戻っているし。
 だからジーニアも母親が姿を消してから、同じようにこっそりと自室に戻った。
 兄のジェレミーの隊長就任は、おめでたいと思うし、妹としても誇らしい気持ちでいっぱいだった。その、昔の記憶さえ思い出さなければ。
 記憶を思い出したところで、寝る前には風呂に入りたいところではあるが、今日はそのような気分にはならなかった。寝間着に着替えると、ベッドへするりと潜り込む。

 このゲームの世界は、日本人がシナリオを考えただけあって、設定は日本と同じ。ただ、建物や登場人物が西欧風というだけで。だから、電気もあるしガスもあるし、ライフラインは日本そのものだ。今だって風呂に入りたいと思ったら、すぐさまそれは叶うのだが。ただ、ジーニアとしてそのような気分にならなかっただけ。

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