BでLなゲームに転生したモブ令嬢のはずなのに
 ジュードが顔を近づけてきて、それはジーニアが「はい」と言わなければ退かないような勢いだった。
 ジーニアが頷くのを確認した途端、ジュードの肩を掴んだのはクラレンスだった。

「近すぎるぞ、お前。ジーニア嬢が怯えている」

「怯えている? 彼女はそんなたまではないだろう。むしろ、この状況を喜んでいるのではないか?」

 ――いえいえ、めっそうもございません。呪われている状況を喜んでいるとかはありません。
 ――喜んでいるのは、この絡みだけです。

 とは口が裂けても言えないジーニアであるため、ジュードの言葉にはだんまりを決め込んだ。

「おい、ジーン」
 勢いよく部屋の扉を、ノックもせずに入ってきたのはもちろん彼女の兄であるジェレミー。ここに来てからジーニアのことをジーンと呼ぶのは兄であるジェレミーと心の友のヘレナだけ。

「ジェレミー殿。もう少し静かにお願いいたします」
 シリルの冷ややかな声は、熱いジェレミーとは正反対のように聞こえた。

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