BでLなゲームに転生したモブ令嬢のはずなのに
「はい」
 クラレンスの言葉にジーニアは頷く。
 父親が娘の卒業パーティのために新しいドレスを仕立ててくれた。ちょっと薄い赤みのかかったジーニアの髪が生えるような、淡い黄色のドレスだった。ヘレナと共に偉い人の話を聞いて、乾杯の儀を、というところで記憶が途切れている。

「あの。卒業パーティは?」

「残念ながら、中止になった」

「私のせい、ですよね。申し訳ありません」

「君のせいではない。むしろ、私のせいだ……」
 そこでクラレンスが苦しそうに顔を歪めた。

「そんなに自分を責めないでください」
 ジーニアからそのような言葉が漏れたのは、恐らく中の人の仕業。毛布の隙間から手を伸ばし、ついクラレンスの頭を撫でていた。そのような行為に及んでいた自身に気付いたジーニアは、はっとして手を引っ込めようとしたが、時は既に遅し。手首をがしっとクラレンスに取られている。

「君は、勇敢なだけでなく、優しいのだな」

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