Macaron Marriage
「フランスはどうでしたか?」

 そう問いかけられ、萌音の表情が和む。

「すごく楽しかったです。大学の紹介でドレスのオーダーや裏面を取り扱う工房に勤めたんですけど、いろいろな経験をさせてもらえて、作るだけじゃなく、作り替えることの楽しさも知ったというか……すごく勉強になりました」
「そういえばホームページにもレンタル以外に、オーダー、セミオーダー、リメイクって書いてありましたよね。全て受けているんですか?」
「私に出来ることがあるのならお手伝いしたいなって思って。ただ職人は私一人なので、限度はありますけどね」

 すると翔は口元に手を添えて何やら考えごとをしてから、何かを閃いたかのように笑顔になる。

「あの、もしよろしければ今度萌音さんの職場を見に行ってもいいですか?」
「えっ、職場ですか? というかさっきの建物ですが……」
「ええ。是非中に入って見てみたいんです。ダメでしょうか?」
「そんなそんな! でも何も楽しいことはないと思いますが……それでも良ければ是非いらしてください」
「本当ですか? じゃあお言葉に甘えて明日とかどうでしょう?」
「明日ですか⁈ だ、大丈夫……です。あっ、でもかなりごちゃごちゃしていて……」
「それはお仕事を頑張っている証ですよ。むしろそういう場面を見たいなぁと思って」
「……翔さん、本当にあの頃と変わってないですね……こんな私に優し過ぎます……」
「そうですか? まぁ強いて言うなら、頑張ってる萌音さんを見たいから、かもしれませんね」

 私をキュンとさせることをサラッと言って退けちゃうんだから……本当にずるい。
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