Macaron Marriage
萌音は頭の中で明日の予定を確認していく。今週は明後日の午後にレンタルの試着と、あと土曜日に来客があったはず。でもそれ以外は作業日のはずだった。
「わかりました。何時頃が良いとかありますか?」
「ありがとうございます。では昼間はいかがですか?」
「大丈夫です」
あっという間に決まった予定に驚きつつも、前菜が運ばれてきたのでそちらに気を取られてしまう。
「春野菜のゼリー寄せ、農園のベビーリーフのサラダになります」
それを見た途端、萌音の瞳がキラキラと輝き出す。彩り鮮やかな野菜たちがゼリーに閉じ込められ、蝋燭の灯りに光っていた。そのまわりに散らしたベビーリーフからは柑橘の香りが漂い、ドレッシングの味が想像出来る。
「素敵……しかも美味しそう……」
「ここのシェフの腕は一級品ですからね。しかも野菜はほとんどがうちの農園で育てたものなんです。地産地消だから、すごく新鮮ですよ」
ゼリー寄せにナイフを入れ、一口食べると頬が緩んだ。
「美味しい!」
「ふふ。それは良かったです」
「翔さんはいつから農業を始められたんですか?」
「始めたのは四年前くらいですが、なかなか上手くいかなくて。軌道に乗ったのは二年前くらいですね」
「じゃあ私が渡仏してすぐくらいですか?」
萌音が言うと、翔は口元に笑みを浮かべる。
「きっかけは萌音さんなんです」
驚いたように目を見張り、翔をじっと見つめた。