Macaron Marriage

「萌音さん、こちらは私の中学高校の後輩の上野(うえの)波斗(なみと)です」

 すると波斗は萌音に微笑みかけると、丁寧に頭を下げた。

「上野です。よろしくお願いします。こちらが妻の紗世(さよ)です」

 波斗の奥に座っていた長い黒髪の小柄な女性は立ち上がると、にっこり笑いかけてから同じように頭を下げた。

 やはり夫婦だからだろうか。雰囲気というか、笑顔も似ている。

「紗世さん、どうぞ座ってくださいね」
「うふふ、ありがとうございます」

 波斗に支えられながらソファに座る姿を見て、萌音はあることを感じ取る。翔の顔を覗き込む萌音を見て、紗世が笑顔で口を開く。

「そうなんです。今妊娠四ヵ月に入ったところで、まだ安定期じゃないから無理は出来ないんですけどね」
「でも産まれたら忙しくなりそうだし、安定期に入ったら結婚式をやりたいねって話してたんです」

 二人が寄り添い合って、自然とお互いの手を握り合う姿を見ていると、心が温かくなるようだった。

「そうだったんですか……。それはおめでとうございます!」
「うふふ、ありがとうございます」

 つい雰囲気に流されてしまったが、今もまだ自分がこの場に連れて来られた理由がわからなかった。
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