Macaron Marriage

* * * *

 慌ただしく朝食を済ませてから翔を見送ると、萌音は一度寝室へと戻った。人と会う予定はなかったが、仕事をするため動きやすい服に着替える。

 ふと乱れたベッドの様子を見て昨夜のことを思い出す。何度も何度も翔とキスをした。初日からあんなに深いキスってありなのかしら……それに……!

 思わず胸を隠すように押さえる。唇が触れることがキス……胸に感じたあれもキスになるんだろうか……。

 今まで味わったことのないような息苦しさ、体の奥からやってくるゾワゾワとした感覚。まるで風船が弾けたかのようなふわふわ感。

 胸だけであれなら、最後までしたらどうなるんだろう……怖いけど知りたくなる。

 部屋が暗かったから翔がどんな表情だったのかちゃんと見ることも出来なかった。からかっていたのか、それともいつもみたいに優しく見つめていたのか……。

 ベッドに倒れ込むと、布団に微かに残る翔の香りを見つけて胸がトクンと高鳴る。

「私……翔さんのことがこんなに好きだったんだ……」

 独り言のように呟くと、恥ずかしさとともに喜びが湧き上がる。

 その好きな人が、期間限定とはいえ恋人になった。こんなに素敵なことってない。彼に愛されるなんて夢みたい。

 そうよ。彼の言う通り、今はこの関係を楽しもう。一生続かななくても、こんな幸せに出会えたのは奇跡だから。
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