Macaron Marriage

10 我慢出来る?

 あの夜から一週間が経とうとしていたが、翔の仕事が忙しくなってきたこともあり、会えると言ってもランチを一緒に食べるくらいしか出来なかった。

 ランチは必ずと言っていいほど萌音の家にやってきて、華子が作ったものを食べる。それから僅かな二人きりの甘いキスの時間を過ごしてから再び仕事に戻っていく。

 あれ以来、翔は萌音にいわゆるキス以上のことはしなくなった。とはいえ翔が萌音に教える濃厚なキスは、いつも体の奥を熱くさせた。

 もしかしてこれが翔さんの狙いなのかしら……わざと私を熱くさせて、翔さんを求めさせようとしてる?

「ご馳走様でした。華子さん、今日も美味しかったです。ありがとうございます」

 食事を終えた翔が満足気に華子に礼を伝えると、華子は嬉しそうに顔を綻ばせる。

「いえいえ。そう言ってもらえたら作り甲斐があるってもんですよ! また是非いらしてくださいね」

 いつの間にか仲良くなっている二人に、萌音はつい吹き出してしまう。自分が大好きな人たちが仲良く話す様子を見て心が和んだのだ。

 すると翔は椅子から立ち上がり、萌音の腰を抱いて立たせる。そして耳元に唇を寄せて、
「大事な昼休みが終わっちゃうよ」
と言ってからペロリと耳を舐めたものだから、萌音は驚いて腰を抜かしてしまう。

「イチャイチャなさるのなら、ご自身のお部屋でお願いしますね」

 華子が言うと、翔はケラケラ笑いながら手を上げ、萌音の手を引いて階段を昇っていく。

 階段を一段一段昇るごとに、萌音は胸の鼓動が早まるのを感じる、淡い期待に胸がときめく。

 こんなの私じゃないみたい……萌音は恥ずかしくて唇を噛み締めた。こんな気持ち、今まで感じたことなんてないの。早くキスしたいなんて口に出したら、翔さんとのその先を求めてしまうのは明らかよ……。
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