Macaron Marriage
* * * *

 門の外から呼び鈴が鳴り、萌音は慌ててインターホンを取る。すると白いセダンの横に立つ松島(まつしま)瑞穂(みずほ)がカメラに向かって笑顔で手を振る姿がモニターに映る。

「今開けますね〜」

 そう言ってから、モニター横の解錠ボタンを押すと門が開き、白いセダンが敷地内に入ってくるのを確認し、すぐに玄関へと急いだ。

 玄関のドアを開けると、瑞穂は車の横に立ち、車から男性が降りてくるのを待っているところだった。

「松島様、お待ちしておりました!」

 萌音が頭を下げると、瑞穂は嬉しそうに微笑みながら駆け寄ってくる。

「池上さん、お久しぶりです。今日はよろしくお願いしますね」
「こちらこそよろしくお願いいたします」

 頭を上げた萌音の目に入ったのは、爽やかな笑顔が似合う長身の男性だった。きっと瑞穂の夫だろう。あまりにもお似合いの二人を見て、萌音はついにやけてしまう。

「お世話になっています。瑞穂の夫の松島恵介(けいすけ)です。今日はよろしくお願いします」
「こちらこそお願いいたします。では中へどうぞ」

 二人を中の部屋へと案内すると、瑞穂はマネキンが着ていたドレスを見つけて感嘆の声を漏らした。

 ソファに座るよりも前にドレスに駆け寄り、じっくりと眺めていく。その後ろから恵介がゆっくりと追いつくと、瑞穂の肩をそっと抱く。その二人の仕草があまりにも自然だったので、萌音は胸がドキドキした。

 翔も海外暮らしが長いからか、自然と触れてくる感じはする。萌音だってしばらく海外にいたし、そういうスキンシップには慣れているはずだった。

 だけど相手が翔だと緊張してしまって、瑞穂のように自然と受けることが出来なかった。

「うん、瑞穂らしい感じがして素敵だね」
「うふふ、写真では見ていたんだけど、やっぱり実物は違うよね」

 萌音は二人に近寄ると、にっこりて笑いかける。

「少しお話ししてからと思ったのですが、もしよろしければ先に試着されますか?」

 すると瑞穂の瞳が輝き出す。

「いいんですか? 是非着てみたいです……先に着てきてもいい?」

 瑞穂は恵介の顔を覗き込む。

「もちろん。俺も早く見てみたいからさ」
「やった! じゃあ池上さん、先に試着させていただいてもいいですか?」
「わかりました。では隣で……」

 そう言いかけた時、突然恵介のスマホが鳴る。画面を見た恵介は立ち上がると、
「ちょっと外で話してきますね」
と言い残して部屋から出て行ってしまった。
< 89 / 130 >

この作品をシェア

pagetop