嫌われ夫は諦めない



「おい、これが夕食なのか?」
「これしか用意できなかったの」

 皿の上にはポテトを茹でて刻んだものを置いてみた。一応、塩と胡椒はかけてあるから、味がないわけではない。

「いただきます」
「……いただきます」

 カトラリーを巧みに使い、じゃがいもの皮をむいて残している。どうやら皮が苦手なようだから、明日も皮つきのままの芋を出しておこう。父にはすりつぶしてスープにしたら喜んでいたから、芋は正義だ。

夕食後に色がついているだけのお茶を飲み終わったリディオが、シャスナに話しかけた。

「おい、帳簿も見てやるからかしてみろ。これでも王子として教育だけはされているから、数字は得意だ」
「王子って、こんな口の悪い王子様なんているの?」
「あぁ? 悪いか? 騎士団に入ればみんな同じなんだよ。それに王子と言っても、母親は平民だったからな。こんなもんだ」
「こんなもんって……」

 疑ってしまうけれど、結婚宣誓書で書かれた名前はまさしく第四王子のものだった。わざわざ僻地へ来る偽物もいないだろうし、食事の時の所作は美しく品がある。そして父と話をする時は穏やかで上品な言葉遣いのため、確かに王子なのだろう。

「わかったわ、ちょっと準備するから、また明日にでも」
「おい、シャスナ。そうだ、今夜から同じ部屋で寝るからな」
「はぁあ?」

 思わず驚きの声を上げるけれど、リディオは平然とした顔をしている。

「当たり前だろう、夫婦は一緒の部屋で寝るもんだ」
「一緒の部屋って……、私の部屋にベッドは一つしかないのよ」
「問題ない。そのベッドで一緒に寝ればいい」
「問題しかないわよ!」

 思わずテーブルを叩きそうになるけれど、リディオは顔色一つも変えずに言い放った。

「シャスナ、王妃の命令なんだぞ、結婚した夫婦が子をなすのは当たり前のことだ。お前は一人娘だから、スティーズレン侯爵家の後継ぎを産む必要があるだろうが」
「それは……、別にあなたが愛人に産ませればいいじゃない」
「お前なぁ、頑張る前に何を言ってるんだよ」
「頑張るって、何を頑張るのよ」

 思わず眉を寄せるシャスナを見て、リディオは「まさか、お前!」とうろたえ始めた。

< 11 / 32 >

この作品をシェア

pagetop